丹後ちりめん −65−

岩滝各区の機業 岩滝の機業(3)
機業の投機性


生糸、縮緬の相場のもっとも変り易いもので、好景気になると「折れて曲って舌出す」という程儲かる半面、不況に見舞われると原料代にも足らぬといったことすらあるのだから、工業でありながら商業的性格が濃厚であった。
売り時買い時に注意するから、見込買い、見込売り、買い待、売り待も随分やらざるを得ぬので、昔から、「ちりめん屋、十年間同じ状態で続くものがない。」と、いわれていた。それ程盛衰が激しかった。
例外は「百姓ちりめん屋」で農家がちりめん屋を兼業するもので飯米は農業により、食生活に心配がなく、蚕を飼って生糸を取り、それを原料に縮緬は雇人無しで嫁や娘が織る。こういう「百姓ちりめん屋」は儲けは少なかったが損をすることもなく、堅実であって、いつまでも同じ状態で続いた。
縮緬屋は、好景気の時は濡れ手で栗をつかむような儲けがあったので生活が派手であり、ぜいたくもした。それが衣食住にあらわれた。それを働いても働いても暮しの楽にならぬのをくやしがって、田地を売ってちりめん屋に転業する者もあったが、これは大てい失敗した。

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