岩滝の歴史 −54−

室町・戦国時代(後編)J 

−菊の方の最後−後編


また一説には、宮津の館に帰った菊の方は、父幽斉にいたわられながら日を送っていた。年もいっているので、かわいそうに思われたのか家臣の篠原五右衛門と結婚させた。
婚礼が終って2、3日たった或日のこと、篠原は何気なく、両足を菊の方の前の方にさし出し「ああ、しびれましたぞ。この足をさすって下され」といった。すると菊の方は、大そう立腹して、物もいわずに部屋を立ち去り「不幸にして一色殿にお別れした後は、一生を独身で暮そうと覚悟していたものを、父の厳命にそむきかねたとはいえ、この館に参ったことを、ままならぬ世の中だと思っていた矢先、足をさすれとは何事であろう。ああ、生き甲斐のないこの身、操を破った女の恥かしさよ」と、泣く泣く父の許へ帰って行った。
幽斉はこれを聞いて大いに立腹し、早速娘を呼び出し、「お前は三従の道を忘れたのか、女の一生は人に従うのであるから、学問などなくともよい。ただ三従の道あるばかりじゃ。
親の家にあっては父母に従い、嫁しては夫に従い、年老いて夫に別れたら我が子に従う。一生の間、自分の生活などあろう筈はない。だから仏も、女は三界(過去、現在、未来)に家なしと教えられたのじゃ。
よく考えてみると篠原はお前を辱しめたのではあるまい。夫にかしずく妻はかくあるべきだと、世の中の手本にしようとした篠原の気持、まさか違うはずはない。
さ、早く婚家に帰れ。もしも父のいいつけにそむくならば二度と再び顔はみないぞ」幽斉はさっと立って出ていってしまった。菊の方は仕方なく篠原の許へ帰っていった。

参考文献 岩滝町誌 昭和45年1月


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