鶏塚 −下−

衝撃の最終回


−つづき− また、先日は、近所の家に入っていって、非常識なことをするといったら・・・寝かせてあった赤ん坊の頬をなめていたということがあったので、余りのことに腹が立ち頸筋をつかみ、こらしめのため続け様に七ツ八ツなぐり、尚厳しく言いきかせてやりました。察するところ、それを遺恨に復讐しようと思ったのにちがいありません。如何に畜生といえ、少しは恩ということも知るべきであるのに、恩を受けた主人に仇をもって報いんとする不敵の振舞は容赦できません。しかし、不憫なのは鶏です。私を救うために啼いたのに、知らぬこととはいえ海へ流したことは可愛そうなことをしました。」と、万感胸に迫り、暫時茫然とした様子であった。
修験者にむかい、「早く例の鶏を迎え取りたいと思いますが、幸い小島に上っているならしばらくは無事でしょう。それよりも先づ身にふりかかる災難の根を絶つことが先決です。」といった。
そうこうしているうちに猫が帰ってきた。
猫が帰ってきたので、修験者の助力を得て直ちに捕り押え、裏畑に引き出して厳しく樹木に縛りつけ、遂に之を打ち殺して山中に埋め、鶏を助け出すために急いで舟を出して小島に漕ぎつけた。着いた時には、数日の飢えに堪えることができなかったのか、鶏は松の根元で死んでいた。
源兵衛は歓き悲しみ、穴を掘って之を埋めて帰り、修験者に事情を話し、その恩に感謝し、数日間修験者を留め厚く之を遇した。
その後源兵衛は鶏のために塔を建て、文殊智恩寺から僧を招き供養した。
これが、今の鶏塚であるとも伝えられている。

 

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